経費削減が進まない理由と解決策|小さな会社は書き出して相談

「もう少し経費を減らせるはず」
そう思いながら、毎月同じ金額が引き落とされていく。気になってはいるけれど、忙しさに流されて手つかずのまま。小さな会社では、とてもよくある光景です。
実は、経費削減が進まないのは、意志が弱いからでも知識がないからでもありません。仕組み上、そうなりやすい理由があります。この記事では、その理由と、小さな会社でも無理なく動き出せる方法を一緒に整理していきます。
- 経費削減が進まない理由は3つです。「何にいくら払っているか見えない」「見直せるか判断がつかない」「1社ずつ交渉するのが大変」。
- 解決策は「全部自分でやらない」ことです。書き出しは経理・事務の担当者に、判断と交渉は複数の解決策を持つ相手にまとめて相談します。
- 社長がやるのは「お願いする」と「最後に決める」の2つだけです。
経費削減が進まないのはなぜ?よくある3つの理由
最初に、言葉をひとつだけ整理します。固定費とは、売上に関係なく毎月(または毎年)決まって出ていくお金のことです。家賃、通信費、複合機のリース料、ソフトの利用料などが当てはまります。経費削減で最初に見直したいのは、この固定費です。一度見直せば、その効果が毎月続くからです。
ところが、この固定費の見直しが、なかなか進みません。理由は大きく3つあります。
理由①:何に、いくら払っているかが見えていない
契約したのは何年も前。当時の担当者はもういない。通帳には「〇〇リース」「〇〇サービス」と名前だけが並び、中身を思い出せない。こんな状態になっていませんか。
これでは、削れるかどうかを考える以前に、検討の土台がありません。責める話ではなく、日々の仕事をしていれば自然にこうなります。「見えていない」ことに気づけただけで、もう一歩前に進んでいます。
理由②:見直せる契約かどうか、判断がつかない
仮に一覧にできたとしても、次の壁があります。「このプランは高いのか、普通なのか」「解約すると業務に支障が出ないか」「そもそも途中でやめられる契約なのか」。
こうした判断には、それぞれの分野の知識が必要です。専門家でない社長が迷うのは当然のことです。分からないから、結局そのままになってしまいます。
理由③:1社ずつ連絡・比較・交渉するのが大変
仮に判断がついても、実際に動くのはさらに大変です。複合機はA社、回線はB社、ソフトはC社。それぞれに電話をかけ、資料を取り寄せ、比べて、交渉する。
1社だけでも骨の折れる作業を、契約の数だけ繰り返すことになります。忙しい社長ほど、ここで止まってしまいます。
解決策は「書き出しは社内で、判断と交渉はまとめて相談」
3つの理由に共通しているのは、社長が一人で全部やろうとしていることです。逆に言えば、役割を分けるだけで、一気に軽くなります。
書き出しは、経理・事務の担当者にお願いする
支払いの情報をいちばん持っているのは、経理や事務を担当している方です。通帳や請求書を日常的に見ているので、社長が思い出しながら書くより、ずっと早く正確に一覧が作れます。
社長がやるのは、「お願いする」ことと、出てきた一覧を見て「最後に決める」こと。この2つだけです。
経理の担当者がいない会社でも大丈夫です。奥さまや事務の方が兼務している場合はその方に頼みます。会計事務所に任せている場合は、「毎月の決まった支払いの一覧を出してほしい」と伝えれば、たいてい対応してもらえます。
1社ずつ交渉しない。複数の解決策を持つ相手にまとめて相談する
一覧ができたら、次は「判断」と「交渉」です。ここを自分でやろうとすると、理由②と③の壁に戻ってしまいます。
おすすめは、複合機・通信・セキュリティ・ソフトなど、複数の商材や解決策を持っているパートナーに、一覧ごと見せて相談することです。「この契約は見直す余地があるか」「他に良い方法はないか」を、まとめて判断してもらえます。
窓口が1つになるので、1社ずつ連絡する手間もなくなります。たとえば複合機のリース料は、機械代と保守料の2階建てになっていて、判断が難しい代表例です。
担当者に渡せる書き出しシートイメージ
以下は、担当者にそのまま渡せるシートのイメージです。1行目は記入例です。
| 項目 | 支払先 | 金額 | 内容 (不明なら空欄でOK) |
|---|---|---|---|
| コピー機・複合機 | 〇〇リース | 月〇円 | リース料+保守料(印刷枚数に応じた料金) |
| 固定電話・携帯電話 | |||
| インターネット回線 | |||
| 電気・ガス | |||
| ソフト・サブスク (会計ソフトなど) | |||
| ホームページ (サーバー・ドメイン・保守) | |||
| セキュリティ (ウイルス対策など) | |||
| 保険 | |||
| 会費・組合費 | |||
| ウォーターサーバー 備品のレンタル | |||
| 駐車場・倉庫 | |||
| その他 (気になる引き落とし) |
使うときのポイントは3つです。
- 内容が分からない行は空欄でOK。「分からない」も、相談先に聞けば済む立派な情報です。
- 年払いも忘れずに。保険・ドメイン・会費などは年1回の引き落としが多く、毎月の明細だけでは見落とします。「年〇円」と書けば十分です。
- 家賃と人件費は今回は対象外。見直しの性質が違い、入れると手が止まるためです。まずは「相談しやすい固定費」に絞ります。
担当者へのお願いは、次のひと言で十分です。
「毎月と年1回の決まった支払いを、この表に書き出してほしい。金額だけで良くて、内容が分からないところは空欄で大丈夫。」
完璧を目指さないことが、途中で止まらないコツです。
まとめて相談できる相手の種類とメリット・デメリット
一覧ができたら、誰に相談するかを決めます。相談先には大きく4つのタイプがあり、それぞれに向き不向きがあります。「どれが正解」ではなく、自社の状況に合う相手を選ぶのが大切です。
| 相談先 のタイプ | 向いている 会社 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 信頼できる知り合いの紹介 | まずは気軽に相談したい | 紹介なので安心感がある。気軽に聞ける | 得意分野が偏ることがある。断りにくい |
| 大手の総合窓口 | 体制や実績を重視したい | サービスの幅が広く、体制が整っている | 窓口が分野ごとに分かれやすい。小規模な契約は優先度が下がることもある |
| 地域密着のワンストップ型 | 窓口を1つにまとめたい | 担当者が固定で、複数の契約をまとめて見てもらえる。小回りが利く | 対応できる範囲は会社によって違う。担当者の力量で差が出やすい |
| 税理士・会計事務所 | まず全体像をつかみたい | お金の流れを把握済み。一覧を出してもらうのが早い | 契約の中身や機器の良し悪しは専門外のことが多い。入口として使うのが向く |
自分に合う相談先の選び方と、確認ポイント3つ
どのタイプに頼むにしても、相談先は自社の商品を勧めたい立場でもあります。だからこそ、次の3点を確認しておくと安心です。
- 提案の理由を説明してくれるか。「なぜこの変更が良いのか」を、言葉で説明できる相手かどうか。
- 解約金も含めた総額で見せてくれるか。月額が下がっても、解約金や初期費用で損をすることがあります。
- 断っても気まずくならないか。「今回は見送る」と言える関係かどうか。
この3つがそろっていれば、どのタイプでも大きく外しません。
よくある質問(FAQ)
- 経費削減は、何から手をつければいいですか?
-
まず「何にいくら払っているか」の一覧を作ることです。削る判断はその後で構いません。経理・事務の担当者に書き出しシートを渡すところから始めてください。
- 今の契約先に直接聞くだけでは、だめですか?
-
悪くありません。ただし、その会社のサービスの範囲内での提案になります。また、契約が複数あると1社ずつの対応になり、「交渉が大変」という壁に戻ってしまいます。複数の契約を横断して見られる相手のほうが、手間は少なくて済みます。
- 契約書や請求書を外部の人に見せても大丈夫ですか?
-
相談の場で見せるのは一般的なことです。心配な場合は、金額と支払先だけの一覧から始め、詳しい書類は「信頼できる」と判断してから見せる、という順番で問題ありません。
- 相談したら、必ず契約を変えないといけませんか?
-
いいえ。相談と契約は別です。「今のままが一番良い」という結論になることも普通にあります。断れる関係かどうかは、相談先を選ぶときの確認ポイントの一つです。
- セキュリティ関係も、一緒に見直せますか?
-
はい。セキュリティ対策は「入れていない」「古いまま放置している」が見えないコストになりやすい分野です。何が必要かは以下の記事で解説しています。シートの項目に入れておけば、他の固定費とまとめて相談できます。
あわせて読みたい
UTMセキュリティとは?必要性と費用の考え方を初心者向けに整理 「セキュリティ対策、うちもそろそろ何かしたほうがいいのかな」。そう思いながら、何年も後回しになっていませんか。 業者から「UTMを入れませんか」と言われたけれど...
まとめ
経費削減が進まないのは、社長の怠慢でも知識不足でもありません。「見えない」「判断できない」「交渉が大変」という3つの壁が、仕組みとして存在しているからです。
ではどうすればよいのか?
- 書き出しは、経理・事務の担当者にお願いする
- 判断と交渉は、複数の解決策を持つ相手にまとめて相談する
- 社長は「お願いする」「最後に決める」の2つだけ
- 相談先は4タイプから、確認ポイント3つで選ぶ
今日できることは、担当者にシートを渡すことだけです。それだけで、止まっていた経費削減が動き出します。

